しじみの育つ環境

どのような食材も育った環境の影響は大きく、良い環境であることが大切です。しじみも同様です。しじみの育つ環境はどのようなところなのでしょうか。

しじみの育つ環境は汽水域と淡水域の二種類

国内に生息している在来種のしじみは三種類あります。そのうち、漁獲の大半を占めるヤマトシジミは汽水域、マシジミとセタシジミは淡水域に生息しています。

ヤマトシジミの育つ汽水域

汽水域とは、淡水と海水が混じりあう水域のことで、汽水湖や河口に存在しています。ヤマトシジミは日本全国の汽水域に生息していますが、産地として有名なのは島根県の宍道湖で、長年しじみの漁獲量全国一位の湖として知られています。島根県東部に位置する宍道湖は日本で7番目に大きな湖で、西部に位置する揖斐川から淡水が注がれ、東部からは日本海より中海、大橋川を通って海水が遡上する汽水湖です。

セタシジミの育つ淡水域

セタシジミは琵琶湖とその周辺の河川の淡水域に生息する固有種です。地質時代の海岸線移動によってヤマトシジミが琵琶湖に閉じ込められ、淡水に適応し分化したものがセタシジミと言われています。琵琶湖は日本一大きな淡水湖で、セタシジミは琵琶湖と琵琶湖に流れ込む瀬田川、宇治川、淀川と京都を流れる疎水に生息しています。

しじみを守る取り組み

宍道湖、琵琶湖とも、戦後よりしじみがたくさん獲れることで有名でしたが、環境の悪化等により漁獲量が激減しました。しじみを環境改善のシンボルとして漁協、行政一丸となってしじみを守る取り組みを始めています。

宍道湖での取り組み

淡水と海水の混じりあう汽水湖である宍道湖ですが、塩分濃度が低下することでしじみをはじめとする漁獲資源が大きな影響を受けてしまいます。塩分濃度が低下するとしじみの餌となる植物プランクトンが減少するほか、アオコが発生し生育環境が悪化します。一時はしじみの漁獲量日本一の座から転落したこともありますが、漁協では休漁日を増やしたり、泥に覆われた湖底を耕したり、一定の大きさまで管理して育てた稚貝を放流するなどの取り組みを行い、再び漁獲量日本一の座に返り咲きました。

琵琶湖での取り組み

琵琶湖では水質の悪化が原因でセタシジミの漁獲量が激減しました。漁協と滋賀県では稚貝の生産・放流、稚貝の放流水域の耕耘及び水草除去をはじめとする水質改善、漁獲する殻長の引き上げの申し合わせなど、セタシジミの回復に積極的に取り組んでいます。

かつては保護する必要を感じさせないほどの豊漁であったヤマトシジミとセタシジミですが、現在は漁協と行政の積極的な取り組みなしでは減少の一途のようです。しじみ料理が庶民の味であり続けられるよう、しじみの育つ環境の改善は積極的に進めていってほしいですね。